全身麻酔について

こんにちは。所沢市小手指のアニマルケアガーデン椿峰です。

久々の投稿になりました。今回は全身麻酔についてのお話をさせていただきます。

人と違って動物の場合は口腔内や眼の周囲などのデリケートな部位を触る時や傷を縫ったりする外科的な処置を行う時には全身麻酔が必要なことが多いです。麻酔にとって必要な要素は、「鎮痛」「鎮静」「不動化」です。人の場合はある程度の痛みなら局所麻酔で痛みを和らげることができ興奮することなく動かずにいてくれますが、動物の場合は痛みだけが取れても動いてしまうことがほとんどで、無理に抑えつけようとすると興奮してしまいます。

安全に検査・処置を実施することと麻酔のリスクをしっかりと検討し、必要に応じて麻酔薬を使用します。

全身麻酔までは必要ない場合は鎮静薬と局所麻酔薬のみで処置や検査を実施することもあります。鎮静薬の作用は何となくボーっとさせるようなイメージです。痛みを伴わない検査や局所麻酔で済んでしまうような小さな傷の処置などはこの方法で十分不動化ができます。全身麻酔と比較して体への負担も少なく、処置後の回復も早いです。

しかし、去勢手術や避妊手術といった一般的な手術は全身麻酔が必要なものがほとんどです。では実際に全身麻酔のリスクはどのくらいあるのでしょうか。

1950年代の研究報告では麻酔に関連した死亡例は犬で1.08%、猫で1.79%、1990年代では犬で0.43%、猫で0.35%、2000年代に入ると犬で0.17%、猫で0.24%です。

人の医療と比較するとまだまだ改善の余地はありますが、獣医療の発展に伴い死亡率は大きく改善してきています。

その中でも特に重要なのは麻酔前のリスクの評価と術後の管理です。健康な子の麻酔関連死亡率は0.05%なのに対して、病気を持っている子の麻酔関連死亡率は1.33%とおよそ26倍になります。麻酔前に各種検査を実施することで隠れている病気を発見し、病気の子に対してはその子に合った麻酔薬を使用することでリスクを軽減することができます。また、麻酔関連死のタイミングは麻酔中よりも麻酔後の方が多いです。特に術後3時間までが麻酔関連死のリスクが高いため必要に応じて酸素室に入れたり、昇圧剤を流したりする必要があります。当院ではどんなに元気な子でも麻酔後3時間はお預かりさせていただいています。

 

2020年も麻酔に関連する死亡事故の発生はありませんが、手術後に一過性の嘔吐があり誤嚥性の肺炎を起こしてしまった子がいました。数日酸素室でお預かり後に状態は安定して無事退院することができました。元々呼吸器に問題のある子でしたが、誤嚥を起こしたのは少なからず麻酔の影響があると考えられました。比較的若くて元気な子だったので大事には至りませんでしたが、高齢な子で誤嚥性の肺炎を起こすと命に関わる可能性もあります。今後はこのような事が起きないようによりいっそう気を付けていきます。

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