混合ワクチンについて

こんにちは。所沢市小手指のアニマルケアガーデン椿峰です。厳しい暑さが続いていますね。皆さん夏休みはいかがお過ごしでしたか。当院ではお盆の期間は多くの方にペットホテルをご利用いただきました。

当院のペットホテルは基本的に1年以内に混合ワクチンを接種している方へのサービスになっております。今日はその混合ワクチンについてお話させていただこうと思います。

~ワクチンはなぜ必要なの?~

ワクチンは感染症を予防するために必要なものです。ワクチンには毒性を弱めたもしくは不活化した病原体の一部が含まれており、これらを接種することで体の中にはその病原体に抵抗するために抗体が作られます。この抗体によって感染を予防したり、かかってしまっても症状を軽くすることができます。人でいうと「インフルエンザ」や「おたふく」「結核」などのワクチンが接種されていますね。ワクチンで予防できる病気の中には感染すると致死率の高い病気も含まれています。こういった病気から身を守るためにワクチンの接種は重要になってきます。

~どんな病気が予防できるの~

ワンちゃん猫ちゃんの混合ワクチンで予防できる病気の例を下記に挙げます。

ワンちゃんでは「犬ジステンパー」「犬パルボウイルス」「犬伝染性肝炎ウイルス」による病気は治療法も確立されていないため、免疫のない状態でかかると致死率が非常に高いです。運よく感染に耐過できた場合は免疫を獲得することができますが、その前に亡くなってしまうことが多いため、すべての動物に接種することが推奨されるコアワクチンとされています。猫ちゃんのコアワクチンには致死率の高い「猫汎白血球減少症」を起こす「猫パルボウイルス」やいわゆる猫カゼ(キャットフル)を起こす「猫ヘルペスウイルス」「猫カリシウイルス」が含まれています。ノンコアワクチンは生活環境や健康状態によって感染のリスクが高い場合に打つワクチンになります。

~子犬、子猫のワクチン。どうやって打てばいいの?~

当院では世界小動物獣医師会(WSAVA)が過去の研究データから作成したガイドラインを参考に接種しています。

子犬や子猫の場合、生後数週間は母親からもらった受動免疫が働き感染症から防御されます。この受動免疫があると自分の免疫(能動免疫)は正常に機能せず、ワクチンを打っても効果が定着しません。この受動免疫が消失する時期は個体差があるため、複数回ワクチンを接種することで受動免疫が早く消失してしまう子、遅くまで残ってしまう子に対応します。

一般的には6~8週齢で1回目のワクチンを接種。その後は2~4週間隔で16週齢以降まで接種。その後は生後半年もしくは1年で再接種。

具体例)生後8週で1回目、生後12週で2回目、生後16週で3回目その後は生後半年もしくは1年で再接種。(下図はイメージ図です)

 

ワクチンプログラム

~成犬、成猫のワクチン~

それでは成犬・成猫のワクチンはその後はどのくらいの頻度で打てばよいでしょうか。1年に1回打つのが当たり前になっている風潮はありますが、実は必ずしもそうではありません。

そもそもワクチンは100%安全なものではありません。接種後に顔が腫れたり、嘔吐や下痢などを起こしたり、接種部位にしこりができたり、数は少ないですがアナフィラキシーショックを起こして亡くなってしまうケースもあります。海外ではそういったワクチンによる有害事象を鑑みて、ワクチンの接種回数を減らす動きがあります。

海外では子犬の時にしっかりとワクチンプログラムを受けているワンちゃんではコアワクチンの免疫持続期間(効果のある期間)は3年以上持続する個体が多いため、追加接種は3年に一回、それ以下の頻度では接種しないことが推奨されています。日本で発売されているワクチンは免疫持続期間に対する記載が無いものが多いため一般的には1年に一回の接種とされていますが、実際に抗体価検査をしてみるとワクチンの効果が2年、3年持続している子もいます。このため、当院では成犬では1年に一回の抗体価検査を推奨しています。コアワクチンに対する免疫が持続している(一定以上の抗体価がある)場合はワクチンの接種はせず、1年後に再度抗体価検査を実施するようにしています。

一方ノンコアワクチンの免疫持続期間は1年とされています。残念ながら、日本ではコアワクチンとノンコアワクチンが混合されているワクチンがほとんどですので、ノンコアワクチンを接種する場合にはコアワクチンも一緒に接種することになります。こういった理由から1年に一回ワクチンを接種する方が多いのが現状です。

 

猫ちゃんの場合はどうでしょうか。

こちらは海外でも生活環境で大きく変わるようです。子猫の時にしっかりとワクチンプログラムを実施しているのが前提ですが、完全に室内飼育で1匹で飼育されている猫ちゃんは3年以上間隔をあけての再接種が推奨されています。

一方室内と室外を行き来したり、多頭飼育をしていたり、ペットホテル等を利用する猫ちゃんは日本同様に1年に1回のワクチン接種が推奨されています。

 

~当院でのペットホテル~

以上のことから、安心してご利用いただくために当院ではワンちゃんも猫ちゃんのペットホテルも当院で1年以内に混合ワクチン(特にコアワクチン)を接種している子もしくは抗体価検査を実施して十分な抗体が認められている子を対象としています。

ワクチンを打っていることが大事なのではなく、実際に免疫があり感染を防御できるかが重要なので、仮にワクチン接種から5年経っていても免疫がしっかりしていれば問題ありません。

※何か持病がありどうしてもワクチンが接種できない(免疫もない)子の場合は他の子と隔離した状態でお預かりすることもできます(別途費用がかかります)。

~最後に~

『ワクチンは1年に一回打つのが当たり前』、逆に『ワクチンは怖いものだから打たなくていい』という考え方は正しくはありません。ワクチン自体は怖い感染症から身を守るために必要なものです。また、同じ地域で生活する集団のほとんどが免疫を持っている(集団免疫がある)状態だと感染症の流行を抑えることができます。狂犬病の予防接種はこの集団免疫をつけるために義務付けられていて、人間の赤ちゃんでも法律に基づいて定期接種を実施しなければいけない病気があります。

今後は日本でも海外のように科学的根拠に基づいて3年に一回の接種が一般的になる時が来ると思いますが、現状では少なくとも1年に一回の抗体価検査が望ましいです(実際に1年でワクチンの効果がなくなっていた子も経験しています)。

結局のところどうしたらいいの?という答えはそれぞれの生活環境によって異なります。

年齢は?生活環境は?同居の子は?お散歩コースは?一緒にお出かけは?アレルギーの経験は?等、状況によって接種するタイミングや種類も変わってきます。

うちの子はどうしたらいいのと悩まれる方が多いと思いますが、その際にはお気軽に獣医師にご相談ください。何事も過ぎたるは及ばざるがごとし、必要な時に必要なことができるように一緒に考えていきましょう。

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