梅雨時期に悩まされる病気。。。

こんにちは。アニマルケアガーデン椿峰です。

7月に入り、雨が続いていますね。この時期になると温度も湿度も上がってムシムシしてきます。人にとってもワンちゃん猫ちゃんにとっても過ごしにくい時期になります。特にワンちゃんですがこの時期に多くなるのが、皮膚病や外耳炎です。今回は外耳炎のお話をしていきます。

まず、ワンちゃんのお耳はどういう構造になっているのでしょうか

①耳介

②耳道

③鼓膜

④鼓室

⑤耳菅

⑥耳小骨

⑦蝸牛

⑧三半規管

基本的な構造は人と同じで、内耳、中耳、外耳から構成されています。

内耳には三半規管、蝸牛があり、音を感じる聴覚や平衡感覚という働きに重要な役割をしています。

中耳には鼓膜、鼓室、耳菅があります。鼓膜には耳小骨という骨が付いていて鼓膜の振動を内耳に伝える役割をしています。

外耳にあたる部分は耳介と外耳道です。外耳の役割は音を集める事で、動物の耳介は効率よく音を集めるために自由に動かす事ができます。人の外耳とワンちゃんの外耳の大きな違いは、人の耳では水平耳道しかありませんが、ワンちゃんの耳には垂直耳道と水平耳道があります。このようにL字型をしているため人と違って湿気がこもりやすく、耳垢がたまりやすい構造になっています。この外耳に炎症が起きることを外耳炎と言います。

外耳炎はいろんな要因が複雑に絡んで発生します。多くはアトピー性皮膚炎や食物アレルギーなどのアレルギー性疾患、脂漏症などの角化異常に伴って発生します。

主因とは単一で外耳炎を発症させる事が可能な因子で外耳炎を管理するうえで最も重要な因子です。主因の多くは完全に取り除く事が難しく、生涯にわたり管理が必要となることも少なくありません。耳ダニの寄生や異物、アトピー性皮膚炎や食物アレルギー、脂漏症や分泌腺の異常、内分泌疾患などがこれに当たります。

副因とは主因によって外耳炎が起こった結果、二次的に付随する因子です。副因のほとんどは完全に取り除く事が可能です。細菌やマラセチアなどがこれに当たります。

憎悪因とは外耳炎が起こった後に発生する耳の構造の変化で、外耳炎の症状をより悪化させる因子です。主因の管理が不十分で初期の憎悪因が適切に管理されていない場合に外耳炎は慢性化し、管理が困難になる事があります。耳道の狭窄や耳垢過多、耳道周囲の石灰化などがこれに当たります。

素因とは外耳炎が起こる前から存在する要因で外耳炎の発症リスクを高める因子です。耳の形態的な問題として耳毛が多い、垂れ耳、耳道が細いなどが挙げられます。パグやシーズー、チワワなどは先天的に耳道が細く、プードルやシュナウザーは耳毛が多い犬種です。また、分泌腺の多い犬種(アメリカン・コッカー・スパニエルやフレンチ・ブルドッグ)なども外耳炎の発症リスクが高いです。多湿な環境も素因の一つです。梅雨時期になると外耳炎の子が増えるのは素因が一つ増えるからですね。

外耳炎への対応で重要なのは主因、副因、憎悪因、素因のそれぞれの因子を同定し、アプローチしていく事です。たかが外耳炎ですが、されど外耳炎です。初期の治療(単回の耳道洗浄や点耳)だけで改善する場合はいいですが、治療が長引いたり、再発したりする子も少なくありません。日常でのケアも含めて付き合っていく必要がある病気である事を認識しなければいけません。

最後にお耳のケアについてお話しします。

正常な耳は自浄作用があるため、耳垢は自然に排出されます。トラブルのない耳に対しては積極的な洗浄は必要ありません。耳垢が全くないことはまれなので正常な耳垢を無理に洗浄しようとすると却って外耳炎の原因になってしまいます。

耳道の洗浄が必要なケースは①異物や寄生虫が存在②外耳炎が頻発する③脂漏症に伴う過剰な汚れ④先天的な耳道狭窄に伴う耳垢の排出不良などです。

うちの子は洗浄が必要なの?と悩まれる方は獣医師にご相談下さい。

耳の洗浄法ですが、イヤークリーナーによるマッサージ法が一般的です。綿棒を積極的に使用すると耳垢を奥に押し込んでしまう事があるので、耳介部の目に見える部分にのみ使用しましょう。洗浄剤は間違っても水道水やシャンプーは使わないようにしましょう。却って刺激になってしまい外耳炎を発症してしまう事があります。動物病院やペットショップで販売しているイヤークリーナーを使用するようにして下さい。イヤークリーナーの種類は耳の状態によって推奨が変わりますので獣医師やスタッフに聞いてみると良いでしょう。洗浄剤を外耳に満たしたら上皮移動に逆らわないように水平耳道から垂直耳道方向にやさしくマッサージをしてあげて下さい。この時に耳を強く引っ張りすぎたり、必要以上に強くマッサージしすぎたりしないように注意して下さい。

よく質問されるのが耳毛についてです。耳毛は外部から異物、微生物、アレルゲンが侵入しないようにしています。基本的に健康な耳では耳毛を抜く必要はありません。上述したような耳毛が過剰な犬種(トイ・プードルやシュナウザー)や耳にトラブルがあり、耳毛に汚れが付いてしまったり、耳毛のせいで耳道内がジメジメしてしまったりするようであれば抜くこともありますが、お家では基本的には抜く必要はないでしょう。

以上がお耳のお話でした。お耳のトラブルは皮膚のトラブルと併せて診察件数がとても多いです。そのままにしておくと慢性化して治療が困難になることもあります。お耳の匂いがいつもと違ったり、痒がる仕草をしたりするようであれば外耳炎の症状かもしれません。その際には早めに獣医師にご相談下さい。

参考文献:犬のスキンケアパーフェクトガイド

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