高濃度ビタミンC療法をはじめました!

高濃度ビタミン療法とは高濃度のビタミンCを点滴し、抗酸化力や免疫力を高める治療です。

医学領域では主に美容やアンチエイジングを目的に利用されている治療です。

この高濃度ビタミンC療法は癌にも効くのではないかと1970年代から研究されています。

1970年代にpaulingらが末期の進行性のがん患者にビタミンCを点滴し、生存期間を4.2倍6倍に延長させました。この発表を受けビタミンCのがんへの効果が注目を集め、多くの研究がされました。

その後否定的な研究もありましたが、紆余曲折を経て米国・公的機関/国立衛生研究所(NIH)の科学者が『高濃度アスコルビン酸(ビタミンC)点滴は、がん細胞に対してだけ選択的に毒性として働く』と発表しました。

高濃度ビタミンCの作用機序としては

①過酸化水素の発生

②血管新生の阻害

③抗炎症作用

④アポトーシスの誘導

⑤細胞増殖周期の停止

⑥代謝調節

などが挙げられますが、がんに対しての主な作用は過酸化水素の発生と考えられています。

高容量のビタミンCが血中あるいは組織内に入るとアスコルビン酸ラジカルが生成され、過酸化水素が細胞周囲に発生します。正常細胞は細胞内にカタラーゼが十分にあり、2H2O2→2H2OO2に中和することが可能ですが、がん細胞は十分なカタラーゼがないためH2O2が細胞内に入りDNAを傷害します。その結果、糖代謝とミトコンドリア機能を阻害してATP生成が低下し、アポトーシスを誘導するとされています。

現在も多くの臨床試験が行われていますが、人では脳腫瘍、肺がん、胃がん、大腸がん、膵臓がん、肝臓がん、乳がん、卵巣がん、子宮がん、膀胱がん、腎臓がん、前立腺がん、白血病、リンパ腫、悪性中皮腫、神経芽細胞腫などで有効性が報告されています。

動物では大規模な研究データはありませんが、ビタミンCの作用は同じと考えられているので、すべてのがんにおいてチャレンジする価値があるとされています。

人での臨床状況における適応は

①現在は有効な治療法がない場合

②抗がん剤や放射線療法が無効な場合

③現在治療中の放射線療法や化学療法に併用

④抗がん剤の副作用が強すぎる場合

⑤手術までの待機中に実施する場合

とされています。動物においても治療が確立されているがんの場合はそちらの治療を優先的に実施することが推奨されます。

実際の投与方法は点滴療法研究会の作成した動物用プロトコールに則って実施されます。

人と同様に点滴用の針(留置針)を設置し、静脈点滴を行います。一回の投与時間は約30~60分です。

一般的には週2~3回の投与を実施し、徐々にビタミンCの投与量を増やしていきます。

高濃度ビタミンC療法は重篤な副作用はほとんどなく、他の治療に比べて動物の負担は少ない治療です。しかし、適応できない症例や慎重に投与しなくてはいけない症例もいます。

適応禁忌の症例は

①G6PD欠損症

②心不全

③高度腎不全

です。

慎重投与は

①腹水、胸水貯留

②リンパ浮腫

③頭蓋内腫瘍

です。

その他、一時的な嘔吐や低血糖、低カルシウム血症などがごくまれに起こることがあります。高濃度ビタミンC療法を実施する際には獣医師の支持に従うようにしてください。

また、高濃度ビタミンC療法にはコラーゲンを増生させたり、解毒作用もあり医学領域ではアンチエイジングとしても取り入れられている治療です。食欲増進などのQOLの改善にも効果があるとされています。現在実施しているがん治療で効果が認められない方や、高齢や持病で大きな治療が受けられずに悩んでいる方はお気軽にご相談ください。

参考資料

Cameron, E. & Pauling, L. (1976) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 73, 3685–3689.

Cameron, E. & Pauling, L. (1978) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 75, 4538–4542

Chen Q, Espey MG, Krishna MC, Mitchell JB, Corpe CP, Buettner GR, et al. (2005). Proc Natl Acad Sci U S A 2005;102:13604-9.

点滴療法研究会:https://www.iv-therapy.org/

 

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